平常心って大事だよな。
とにかく、俺の今日の目標は平常心なんだ。
教室の外に広がる雲一つなく真っ青な空だって、まるで俺を応援しているようじゃないか。
「それはないって! 可愛いヤツだなぁオイ」
俺にとっては出来たてホヤホヤのクラスメイト。クラスメイトにとってはずっと前から知っている俺。とても説明が難しい関係の彼を見上げ、俺は座り慣れない椅子に寄り掛かる。話題は見たこともないドラマについて。簡単に合わせることができる、軽い内容だ。
「本当に可愛いなぁお前。見た目とのギャップがたまんねぇ!」
湿度の低い爽やかな風が俺の髪を揺らす。
クラスメイトの彼は俺より華奢で、可愛らしかった。俺は笑う。少々ワザとらしいくらいに。みろ、涙まで出てきた。俺の苦労を分かれ。
なあ、萱。
背中に居るはずの彼女の視線が痛い。爽やかな風は相変わらず俺を慰めるように吹くけど、悪いが俺は寒いぞ。うん。
今、この教室で萱だけが異質だ。萱だけが俺を知らない。突然日常に入り込んできた、この美形の闖入者は何者っ!?…って思っているだろう。
騒ぎ出さないでくれよ、頼むから。俺だって馴染むのに精一杯なんだから。心は乱さず、平静に。
でも俺の苦労なんか知るはずのない萱は、俺の後ろで動く気配がない。仕方ない、助け舟だ。俺はほんの少し大きく息を吸い込んで、なんでもないふうに萱を振り返る。
「萱、聞いた?」
あーあ、目を真ん丸にして。顔に『誰だこいつ?』って書いてあるよ。
「こいつガチ天然。ウケるわーマジ腹痛ぇ」
俺は笑うしかない。だってこんなところで、君に事情は説明できっこないんだから。笑いはこの場を救う…筈。俺の笑い声だけ教室に響いてる。…俺って、もしかして、浮いてる?いやいや、平常心だから。頑張れ、俺。
「ありえねぇ!」
「本当に可愛いなぁお前。見た目とのギャップがたまんねぇ!」
少々悪いがクラスメイト君。もう少し協力してくれたまえ。心の中で謝ってから、俺は更にクラスメイト君をからかった。
連続で言って、萱を見る。ほれ、俺がこんなに笑ってんだぞ。少しは微笑んでくれてもいいだろう?って、萱、そんなに強く手を抓るなよ…手に跡がつくだろが。
俺は思わず立ち上がった。俺のせいで萱が傷つくのは嫌だった。だって俺は…。
「萱、どうした?」
怖がらないでくれ。俺の発した台詞には、そんな訳がついている。俺は萱に手を伸ばす。
萱は無言で俺を突き飛ばした。ある程度覚悟していたのに、俺はあっさりひっくり返る。派手な音がした。教室の天井と、困り顔の萱が見える。
「ごめん、大丈夫?」
萱が言う。思い出した、平常心。いつの間にか、心臓が早く鳴っている。馬鹿だなあ俺、動揺してんじゃん。
困った顔のまま、萱が俺に手を伸ばす。俺はその手を取らずに立ち上がった。言っとくけど(言えないけど)、怒ってるわけじゃないぞ。でも、そのくらいの仕返しは許せよな。
だって俺は君を守りに来た、騎士なんだから。…少しは大事にしてもらわないと、ね。
比紗由さんからもらったどーーーーー!!!十六夜おめでとう!炒めてくれる人がいたよ!チャーハンになったよ!
Fioriの冒頭。くろネコは彼の心理をキチンと把握しておりませんが、こんな感じなんですかね。読んでるだけでキュンキュンくるよ。ありがとうございました!